カテゴリ: Use Cases
ドリンクミキサーに隠れた産業の未来
課題
インダストリー4.0のような新たなコネクテッドコンセプトは、歴史的に例を見ないレベルの俊敏性と柔軟性を提供する点で大きな可能性を秘めています。現代のサプライチェーンは、すでに十分な統合が行われ、流動的で迅速な対応が可能になるよう設計されていますが、製造業の大部分は依然として、規模の経済、大量生産、入念な事前計画に縛られているのが現状です。
そのような中、IIoTは、真に産業的な規模での少量生産、あるいはカスタマイズ生産を可能にすることで、この状況を変えようとしています。出荷時に設定された機能だけでなく制御ソフトウェアによって柔軟に機能を選択できる機械や、これまでにないコネクティビティによって、インダストリアルエンジニア、メーカー、エンドユーザーそれぞれが、これまで以上に緊密に連携することが可能になります。これにより、例えば、所有する自動車の部品に対するアドホックな調整や、スニーカーのカスタマイズという選択肢を現実のものにすることができます。
但し、これらの多くは実現に至っていません。そのような中、インダストリー4.0におけるITセキュリティのドイツ国家標準プロジェクトであるIUNOは、スマートドリンクミキサーを運用する安全な技術データ向けマーケットプレイスにて、新機能の実証実験を開始しました。
解決
IUNOの実証モデルは、擬似的なサプライチェーンの両端から構成されています。つまり、ドリンクの考案者がレシピをアップロードできる技術データ向けマーケットプレイスと、そのマーケットプレイスに接続し、暗号化されたレシピにライセンスを付与するカクテルミキサーです。このシステムは、Wibu-Systemsが提供するクラウドベースのCodeMeter License Centralを使用して、レシピを保護します。このスマートな生産過程において、「通貨」として機能する製造データは、ミキサーへ送信されるタイミング、ミキサーでドリンクが作られるタイミング、どちらにおいても、完全に暗号化されます。ミキサー内部には、InfineonのSLM 97セキュリティ・コントローラーを搭載したCodeMeterドングルが接続されており、トラスト・アンカーと信頼できる身元証明の役割を果たしています。
結果
IUNOの実証モデルは、Wibu-Systemsのソリューションによって完全に保護されると同時に、新規参入者やベンダーを迎え入れるのに十分なオープン性を備えた、安全な技術データ向けマーケットプレイスのお手本のような存在です。IUNOのカクテルミキサーは、製造業における新たなパラダイムシフトを起こすきっかけになるでしょう。かつて、垂直統合とは、サプライチェーンにおけるすべてのつながりの物理的な管理・所有を意味しましたが、今では、独立したパートナー同士の連携を意味するようになりました。レシピと同様に、製造データのやり取り・ライセンシングが行われ、インダストリアルインターネットを通じて、サービスとしての製造を提供するスマート工場へと安全に送られます。これにより、ベンダー、ユーザー、そして製造者のための新しい商業的な自由とアクセスが生まれます。そして、これらすべてのステークホルダーは、CodeMeterのライセンシングと保護機能の力によって、データ漏洩や、サプライチェーンに属す不謹慎なパートナーが起こす不正使用、あるいは改ざんの心配から解放されます。
ソリューション
マーケットプレイスへのアクセスとデータの知的財産権は、インダストリー4.0において必須の条件となっています。これらはどちらも、Wibu-Systemsが提供するクラウドベースのテクノロジーによって保護できます。
スマート・カスタム・マニュファクチャリングの現場を見るチャンス
産業の未来を象徴するキーワードは、コネクテッド、インテリジェント、レスポンシブ、そしてカスタマイズの4つです。インダストリー4.0のようなコンセプトのもと、私たちは、目指すべきロードマップとビジョンを描くことができます。マシン間通信や新たなHMI(Human Machine Interface)のためのプロトコルはすでに実用化されており、現在も改良が続けられています。ハードウェアは、新しいデータインフラから現場の産業機械に至るまで、アップグレードや改良が施された既存の設備や、新設の工場に展開されつつあります。また、産業エンジニアや現場の製品オペレーターも、サイバー犯罪の脅威を深刻に受け止め始めており、保護やライセンシングへの投資を進めています。しかしながら、IIoTやスマート工場を実際に体感できる機会はまだまだ少ないのが現状です。
インダストリー4.0におけるITセキュリティのドイツ国家標準プロジェクトであるIUNOの一貫として開発された、スマートドリンクミキサーは、実際に体感できる実証モデルです。このミキサーは、安全な技術データ向けマーケットプレイスが、スマートで、コネクテッドで、完全にセキュアでライセンスで管理されたサプライチェーンのフロントエンドとして、どのように機能するかを示します。
IUNOのメンバーであるWibu-SystemsとTRUMPFを含むマルチベンダープロジェクトパートナーシップよって開発されたこのドリンクミキサーは、技術データ向けマーケットプレイス(ベンダーがお気に入りのレシピを追加できるドリンクのリポジトリ)を、安全なデータ転送コンセプトと同様に保護されたフロントエンドハードウェアと組み合わせることで機能します。ユーザーが自由にレシピを選択し、https://iuno.axoom.cloud上でカスタマイズされた販売プラットフォームからドリンクを選び、Testnet Bitcoinで代金を支払います。ユーザーがドリンクを選択し、支払いが完了すると、技術データ向けマーケットプレイスは、ライセンス管理のためのクラウドソリューションであるWibu-SystemsのCodeMeter License Centralを使用して、暗号化された形で、ミキサーへ注文内容を送信します。ここでは、暗号化、ライセンシング、操作の安全性が確保されています。ミキサー本体では、産業標準であるInfineon製のSLM 97セキュリティコントローラーを搭載したCodeMeterドングルが、保護された制御用ソフトウェア、そして、マーケットプレイスとの取引におけるミキサーの真正性、これらに対するトラスト・アンカーを示します。クラウドマーケットプレイス、その送信過程、ミキサー自体など、サプライチェーンのいかなる段階においても、レシピの流出や改ざんは不可能です。また、CodeMeterテクノロジーは、レシピというIP(知的財産)の保護に加えて、各レシピへのライセンス付与にも使用されます。これにより、支払われた数のアイテム(今回はドリンク)しか製造することができなくなります。暗号化されたレシピは、製造可能な数量が定義されたライセンスがなければ価値がありません。通常の製造作業と同様、技術(ミキサー)のメーカーと、製品(レシピ)のベンダーは、同一である場合も別個である場合もありますが、どちらにおいても、IPの安全性と健全性は保証されます。
フロントエンドにいるユーザーは、もちろん、こうしたミキサーの背後で活躍するソフトウェアやハードウェアの存在を知りません。しかし、産業は確実に未来へと進んでいること、これだけは確かです。