クラウドとオンプレミスを組合せたライセンスシステムの必要性
2023-10-26 Rüdiger Kügler
最近、2014年に書かれたブログ記事「Back to the Future: Is Electronic Software Delivery Making a Big Return?」を目にしました。この記事は、世界的な電子決済サービスのプロバイダーであるVerifoneのJason Edge氏によって投稿されたものです。この記事において、Edge氏は、アプリケーションをSaaS(Software-as-a-Service)形式で提供する傾向が強まっていることと、今では当たり前となっているその利点(エンドユーザー視点:初期費用の安さ、開発者視点:定期的な収益予測が可能、両者の視点:ビジネスアプリケーションにどこからでもアクセス可能な利便性)について指摘しています。一方で、同氏はSaaSアプリケーションの欠点にも触れています。それは、インターネットへのアクセスの可用性と質についてです。通信速度が遅くなる、あるいは、最悪の事態として、アクセスできない状態が発生する可能性もあります。このような場合、インターネットを経由したSaaSアプリケーションに比べ、ローカルマシン上でアプリケーションをホストする、従来の電子ソフトウェア配布(ESD)モデル(いわゆるオンプレミスソフトウェア)のほうが依然として有効であると著者は主張しています。しかし今現在、この欠点は克服されていると考える方もいるのではないでしょうか。今やインターネットアクセスにおいて、高い可用性と品質は完全に保証されていると。
いいえ、それは間違いです。すべてのケースで保証されているとは言い切れません。この記事の著者であるEdge氏は、こうなることを予想していたのではないかと私は思うのです。この10年で、SaaSは急速に広まり、ソフトウェアの収益化と配布に関するさまざまな創造的な手法(例:サブスクリプションモデル、従量課金モデル、フィーチャーオンデマンドモデル)を生み出してきました。これは紛れもない事実です。そして現在、あらゆる場所からインターネットにアクセスすることができます。最近では、列車、船、飛行機でも、一定程度利用が可能となり、特に出張中のビジネスパーソンにとって、インターネットアクセスは、宿泊先を選ぶ上で欠かせない要素となっている点で、消費者はその恩恵を十分享受していると言ってよいでしょう。もちろん、このような場所では、アクセスの質がやや劣ることは否めないものの、帯域幅は概ね、オンラインコミュニケーションや、広く利用されている軽量のビジネスアプリケーションの実行に支障をきたすほどではありません。
しかしながら、やはりインターネットアクセスや品質に問題があることは事実であり、必ずしもSaaSバージョンのアプリケーションへのアクセスに適しているとは言えない点が以下の2つ考えられます。
- セキュリティ:インダストリー4.0に伴い、予防保全などを目的として、インターネットを介した製造データの送信が増えています。多くの場合、取込まれたデータは、専用のゲートウェイを経由してインターネットに転送されます。しかし、現場の製造設備はインターネットに接続されていないケースが多いため、オフラインで自律的に稼動しているのが実情です。これには理由があります。インターネットへの接続が遮断された場合の、マシンの急停止を避けるためです。そうすることで、多額の損失を生む可能性を排除することができます。(インターネットへの接続が遮断され、製鉄所で炉が冷え切る様子を想像してみてください。)さらに、オフラインにはもう一つのメリットがあります。それは、サイバー攻撃や妨害行為からマシンを守ることができるという点です。攻撃者は、デバイスがオンライン上にない限り、改ざんすることはできません。
- 帯域幅:非常に複雑なアプリケーションを効率的に動作させたい、つまりSaaSがそもそも選択肢とならないモバイルユーザーにとって、最大帯域幅は必要要件です。産業オートメーション、輸送、エンジニアリング、地球物理学など、複雑な計算が求められるような分野がここに当てはまります。
このように、Edge氏が記事内で主張した通り、SaaSとローカルマシン上で実行されるオンプレミスアプリケーションの両方を利用するハイブリッドアプローチが最適なソリューションと言えるでしょう。Wibu-Systemsもまた(場合にはよりますが)ハイブリッドモデルが最善のアプローチであると考えています。これは、SaaSとオンプレミスを組合せた実装、またはその組合わせに対応するCodeMeter License Central ソリューションを開発した理由の1つでもあります。
Wibu- Systemsでは、すべてがソフトウェアのライセンスから始まります。ハイブリッドモデルでは、エンドユーザーがいつでもどこでも(オンプレミス、プライベートクラウド、または一般的なクラウドサービス(例:Amazon Web Service(AWS)、Microsoft Azure))ライセンスにアクセスしてソフトウェアを実行できるよう、開発者がその機能を提供します。オフライン環境では、インターネットへの一時的な接続、あるいはファイル転送によるライセンスファイルの交換のみが必要となります。エンドユーザは、所有するデバイスでライセンスをアクティベートし、それをオフラインで使用することができます。一方、オンライン環境では、ライセンスはクラウド上のセキュアな(ユーザーにバインドされた)コンテナに保存され、クラウド上で直接オンラインで使用することができます。
10年前からEdge氏によって指摘されていたように、SaaSとオンプレミスとを組合せたハイブリッドのソフトウェアライセンシングソリューションは非常に有効です。クラウドライセンシング、特にオフライン環境におけるクラウドライセンシングに関して興味のある方は、是非11月8日に開催される弊社のウェビナー「Cloud-Based Licensing in Offline Scenarios(英・独)」にご参加ください。(当日ご都合の悪い方でもご登録いただければ、後日録画のリンクをお送りします。)ウェビナーでは、クラウドからオフライン上のデバイスにライセンスを転送するためのさまざまなアプローチについて説明する予定です。アプリケーションとワークフローに最適なクラウドライセンシングをお探しの方のご参加をお待ちしております。
関連情報
- CodeMeter License Central:ライセンスの作成・管理システム
- CmCloudContainer:クラウドライセンス用のライセンスコンテナ
貴社の課題をCodeMeterで解決しませんか?
お気軽にお問合せください。製品説明および最適な使い方をご提案します。
お問合せ
Contributor
Ruediger Kuegler
VP Professional Services | Security Expert
1995年に物理学の学位コースを修了後、ソフトウェア保護、ソフトウェアの配布、インターネットバンキング、マルチメディアプロジェクト等のプロジェクト管理責任者を務める。2003年、Wibu-Systemsに入社し、その役割の一環として、Blurry Box技術の開発に大きく貢献。