AI、機械学習(ML)、Python:AIモデルの保護方法
2024-06-06 John Poulson
先日、アメリカイリノイ州のシカゴで、Automate Showが開催されました。何千名もの産業オートメーションに関心のある人々が集まり、協働ロボットから、効率性に優れた製造プロセスやスマート工場に至るまで、最新のテクノロジーやソリューションについて学び、議論する場となりました。展示スペースでは、マシンビジョンやロボット分野における、従来の常識を覆すようなソリューションの発明を支援する、AIと機械学習(ML)による斬新なアプリケーションが注目を集めました。例えば、最先端のAIとマシンビジョン技術を組み合わせることで、工場のオペレーション最適化、人間と同様のタスク処理が可能なスマートロボットの進化を実現します。
このようなイノベーションは、ソフトウェア、また、多くの場合はデータから生み出されています。これらは、知的財産(IP)であり、ライセンス管理、そして、リバースエンジニアリング、改ざん、違法コピーからの保護が重要です。では、ここからは、AIをベースとしたアプリケーションの収益化に関して、具体的な例をお話します。
これは、パーキンソン病の早期発見に向け、AIを活用したデバイスを開発中の医療機器メーカーの事例です。開発促進のためには、患者と健常者、両方のデータが必要となります。そのデータには、血液の値だけでなく、皮膚内のαシヌクレインの有無や、各種基礎疾患データ(例:胸やけ、消化不良、性機能障害)が含まれます。これらのデータは全て、デバイスの性能評価に必要となります。データの収集後、データを確認し、測定エラーを検出します。その後、この生データ(例:H5ファイル形式)から、AIモデルを作成します。
デバイスは、入力要素、Pythonで開発されたソフトウェア(使用ライブラリの例:TensorFlowやPyTorch)、H5ファイルで構成されています。医師はまず、患者のデータを記録し、デバイスに入力します。その後、デバイスは、AIモデルを用いて、パーキンソン病の予測値を算出します。発症の10~20年前など、診断が早期であるほど、適切な処置を施し、病気の進行を最小限に抑えることができます。
この事例にて、まず保護が必要なIPは、H5ファイルです。医療機器メーカーは、記録すべきデータの選定、データの収集、データのクレンジングに多大な労力を費やします。もしもこのデータが盗まれることがあれば、少ない開発コストで、同等の医療機器が開発されてしまう恐れがあります。
Wibu-Systemsが提供するAxProtector Pythonを使用することで、この違法コピーを防止することができます。AxProtector Pythonでは、アプリケーションとデータの両方を暗号化することができます。セキュアなデータ保護を実現すべく、この医療機器メーカーは、セキュアなハードウェアエレメントであるCmDongleのASICタイプを採用しています。ソフトウェアとデータのキーは、CmDongleに保管され、読み取られることはありません。またCmDongle自体も、ASICとしてデバイスに常時固定される形で、インストールされるため、デバイスから取り外すことはできません。さらにCmDongleの代わりとして、コンピュータに紐付き、暗号化されたライセンスファイル(CmActLicense)、または、クラウド上にあるユーザーベースのコンテナ(CmCloudContainer)を使用することも可能です。最低限のセキュリティを安価で実現したい場合には、CmActLicenseが、アプリケーションをオフラインのデバイスではなく、クラウドで使用する場合には、CmCloudContainerが適しています。今回の事例では、最高水準のセキュリティと、オフラインの使用が要件として含まれていたため、CmDongleが採用されました。
ソフトウェアとデータのキーは、「FileEncryption」オプションがアクティベートされた際に、AxProtector Pythonがアプリケーションを暗号化するために使用されます。このオプションは、保護だけでなく、暗号化されたデータファイルをアプリケーションに読み込む機能も有します。データファイルの読み込みは、保護された環境で、データファイルのキーが利用可能な場合にのみ行われます。さらに、データファイルは、AxProtector Pythonによって暗号化されます。
開発過程では、保護されたアプリケーションとデータファイルがデバイスにインストールされ、適切なキーがCmDongleへ転送されます。これでデバイスは完成し、適切な医療承認が得られれば、実用化の準備が整います。
また今回のケースでは、CmDongleに永久ライセンスが適用されました。この場合、キーの使用期限はありません。デバイス購入時の医療機関の支払いは、一度のみです。もちろん、デバイスをレンタルするサブスクリプションモデル、使用分の費用を支払うペイ・パー・ユーズモデルも用意されています。CmDongle、CmActLicense、CmCloudContainerにて、これらオプションの使用が可能です。また、アップデートを収益化することも可能です。この場合、新たなAIモデルは新たなキー、つまり、別のライセンスで暗号化されます。新規ライセンスを購入することで、更新されたAIモデルの使用が可能になります。
AIベースのアプリケーションをPythonで開発中の方はぜひ、過去のウェビナー「遂にPYTHONに対応!コードの暗号化とライセンスビジネス」をご覧ください。アプリケーションに組み込まれたノウハウとデータをリバースエンジニアリングから保護する方法、そしてCodeMeterを用いて、ソフトウェアを収益化する方法を学ぶことができます。
関連情報
- AxProtector Python:Pythonアプリケーション用暗号化ツール
- CmDongle:ソフトウェア認証用のUSBドングル
貴社の課題をCodeMeterで解決しませんか?
お気軽にお問合せください。製品説明および最適な使い方をご提案します。
お問合せ
Contributor
John Poulson
Sr. Account Manager
2001年以来、Wibu-Systems USAでビジネス開発およびセールスを担当。ソフトウェアライセンシングとプロテクションソリューションに関する顧客とのコンサルティング以外でも、業界のトレードショーやカンファレンスに出席し、IT界の最新動向の把握に努める。Wibu-Systems以前は、ソフトウェアセキュリティのパイオニアであるMicro Security Systems社、Eagle Data社、Griffin Technologies社で勤務
長年にわたり、暗号に関する一般的な話題や、新しく革新的な方法による組込みシステムの収益化について、いくつかのブログを執筆。