鉄道業界における「security-for-safety」の実現
2024-02-15 Stefan Bamberg
鉄道車両同士での衝突事故は、運行時における事故や災害の中で、極めて稀なものではありますが、最も悲惨な事態を招くと言っても過言ではありません。
2023年、旅客列車と貨物列車が正面衝突するという、ギリシャ史上最悪の鉄道事故が発生しました。この衝撃的な事故により、少なくとも57人の命が奪われました。後に、同じ線路上に貨物列車がいたにもかかわらず、旅客列車が誤って走行したという人為的ミスが事故の原因であったと判明しました。
また過去には、マレーシアで、マニュアル運転の試験車両と自動運転で走行中だった旅客列車が正面衝突し、213人の負傷者を出す事故も発生しています(2021年5月)。この事故は、運行センターの連絡ミスが原因と考えられています。
さらに遡り2016年には、西ヨーロッパで2件の鉄道事故が発生しました。1件目はドイツでの事故で、旅客列車2台が正面衝突し、12人が死亡、85人が負傷しました。2件目の事故はイタリアで起こり、こちらも旅客列車2台の正面衝突により、23人が死亡、85人が負傷という結果を招いています。前者の事故は、運行管理者が携帯電話で遊んでいたゲームに気を取られ、列車2台に誤った指示を出したことが原因とみられています。
鉄道業界は、約2世紀にわたり受け継がれてきたインフラの基盤と、最先端技術や飛躍的な進化とが混在しています。それ故に、最新の相互接続された鉄道運行システム、老朽化した線路や車両、そしてその線路上を行き来する多種多様な車両に、システムエンジニアは悩まされています。列車間での衝突事故は、人為的なミスからハードウェアやソフトウェアの誤作動に至るまで、さまざまな要因が考えられます。さらに今日、鉄道事業者は、最新の高性能な通信・運行システムを脅かす妨害行為やサイバー攻撃にも備える必要があります。
そこで登場するのが、ドイツ航空宇宙センター(DLR)の分社として誕生したIntelligence on Wheelsの接近警報システム「TrainCAS」です。TrainCASは、列車間通信、自己位置特定(軌道選択型)、状況分析/意思決定支援という3つの備えています。このシステムは、すでに確立された鉄道安全インフラと並行して機能するように設計されているため、特に、近代的な地域路線や、複雑な単線を中心に路線やサービスを設計せざるを得ない小規模な鉄道事業者にとって、高い安全性を補完するものとして役立ちます。
しかしながら、システムに組み込まれた画期的なテクノロジーが犯罪に悪用される可能性は否めず、安全性の確保だけでなく知的財産(IP)の保護も最重要課題となっています。安全でセキュアな鉄道利用の実現に向け、高度なハードウェアやソフトウェア、さらにはデータが合わさったこのシステムには、ハッカーやその他悪意ある者からの攻撃に限らず、競合他社やモラルに欠けたユーザー、または単に面白半分で行動に移す第三者による不正利用や悪用に対する保護が必要不可欠です。特に、堅牢なエンジニアリングを必要としつつ、規制当局からの目が厳しい鉄道業界では、最新の技術動向と厳しい要件に合致した、IP保護とソフトウェアライセンス管理のためのソリューションが求められます。とりわけ、今日の大規模モビリティインフラにおける、この業界の役割の重要性を考慮に入れるならば、異論は無いはずです。
そこでIoWは、ソフトウェアの暗号化・保護のために、Wibu-SystemsのCodeMeter技術を採用し、ハードウェアベースの暗号化セキュリティコンポーネントを、現場で使用されるTrainCASに組み込みました。またハッカーや第三者からの保護を目的に、暗号化コードを実行するためのライセンスリポジトリーおよび安全な隠れ蓑として、CodeMeter Card (CmCard)が採用されました。さらに、TrainCASのソフトウェアと、状況把握に役立つトラックナビマップは、IoWの組込みシステム向けに開発された、AxProtectorとCodeMeter Core APIの組み合わせによって保護されています。これにより、ライセンスを持たないユーザーによる不正使用と、システムの操作を試みる第三者による故意または不注意による改ざんの両方を防止することができます。
同社のCEOを務めるThomas Strang博士は、次のように述べています。「私たちが描く「security-for-safety」には、2つの意味が含まれています。1つは、私たちのビジネスを実現に導くIPの保護、そしてもう1つは、線路上を走る列車へのサイバー攻撃の阻止です。志を同じくするWibu-Systemsというパートナーとの連携は喜ばしいことであり、CodeMeterを実際に手に取った際には、TrainCASが稼働している様子を目にした時と似た安心感を得ました。」
このように、IoWが重視する「security-for-safety」をサポートするこの革新的なソリューションは、サイバー攻撃からの重要インフラの保護、盗難からのIP保護、そして安全なサービスに向けた新たなビジネスモデルの創出を可能にします。詳細については、こちらのケーススタディからご覧いただけます。
関連情報
- CodeMeter Protection Suite:CodeMeterの暗号化製品シリーズ
- CodeMeter Core API:CodeMeter専用のAPI
- CmDongle:ソフトウェア認証用のハードウェアドングル
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